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東京地方裁判所 平成11年(ワ)12799号 判決 2000年7月18日

原告

サニー株式会社

右代表者代表取締役

【A】

右訴訟代理人弁護士

手塚裕之

三村まり子

田中久也

町田行人

右補佐人弁理士

【B】

被告

株式会社ソリック

右代表者代表取締役

【C】

右訴訟代理人弁護士

田倉整

田中成志

右補佐人弁理士

【D】

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、別紙原告物件目録記載の自動ドアを製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、譲渡又は貸渡しのために展示してはならない。

二  被告は、前項の自動ドア及び半製品を廃棄せよ。

二  被告は、原告に対し、金一億五七五〇万円及びこれに対する平成一一年六月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、特許請求の範囲記載の発明を「本件発明」という。また、本件特許権に係る明細書(甲二)を、「本件明細書」という。)を有している。

登録番号 第一九〇一九五一号

発明の名称 自動ドア制御装置

出願日 昭和五五年六月一〇日

出願公告日 昭和六三年一二月二二日

登録日 平成七年二月八日

特許請求の範囲

「ドアを開閉駆動するモータと、該モータの回転に基づいて、ドアの移動量又は回転角度を検出する検出手段と、電源が投入されたとき又は電源が投入された後ドア始動信号が発生したとき、上記検出手段によって検出された、最初にドアが開又は閉のいずれか一方に動作して移動した距離又は回転角度を記憶する記憶手段と、上記検出手段によって検出された、その後のドアの開閉動作時における移動距離又は回転角度を、上記記憶手段に記憶されている最初にドアが開又は閉のいずれか一方に動作して移動した距離又は回転角度と比較することによって、上記モータを制御する制御手段とを設けたことを特徴とする数値制御方式の自動ドア制御装置。」

2  本件発明の構成要件は、次のとおり分説される(弁論の全趣旨)。

(一) ドアを開閉駆動するモータ

(二) 該モータの回転に基づいて、ドアの移動量又は回転角度を検出する検出手段

(三) 電源が投入されたとき又は電源が投入された後ドア始動信号が発生したとき、前記検出手段によって検出された、最初にドアが開又は閉のいずれか一方に動作して移動した距離又は回転角度を記憶する記憶手段

(四) 前記検出手段によって検出された、その後のドアの開閉動作時における移動距離又は回転角度を、前記記憶手段に記憶されている最初にドアが開又は閉のいずれか一方に動作して移動した距離又は回転角度と比較することによって、上記モータを制御する制御手段

(五) を設けたことを特徴とする数値制御方式の自動ドア制御装置

3  被告は、ソリック自動ドア「SHー22シリーズ」という商品名の別紙物件目録記載の自動ドアの駆動装置(以下「被告物件」という。)を製造販売している。

二  本件は、本件特許権を有している原告が、被告に対し、被告物件は本件発明の技術的範囲に属するから、被告による被告物件の製造及び販売は右特許権の侵害であると主張して、右製造販売等の差止め、被告物件の完成品及び半製品の廃棄、右侵害による損害の賠償を求める事案である。

第三争点及びこれに関する当事者の主張

一  争点

1  被告物件の動作の特定

2  被告物件は、構成要件(三)及び(四)を充足するか

3  損害の発生及び額

二  争点に関する当事者の主張

1  争点1について

(原告の主張)

被告物件の動作は、別紙原告動作説明書記載のとおりである。

(被告の主張)

被告物件の動作は、別紙被告動作説明書記載のとおりである。

2  争点2について

(一) 被告物件において、電源投入後最初にドアが開から閉に移動する間に測定され、RAM32に記憶されたドアのストローク値(初期計測値)が、EEPROM5に予め格納されたドアの駆動制御の基準とすべきストローク値のデータ(基準データ)より二〇ミリメートル以上小さい場合又は二〇ミリメートル以上一〇〇ミリメートル未満の範囲で大きい場合で、リセットボタンを押さない場合

(原告の主張)

構成要件(三)の「最初に」とは、いわゆる初期学習としてドア板を制御する目的でドア板の移動距離又は回転角度(以下「移動距離等」という。)の計測を行う場合を指し、「ドアが開又は閉のいずれか一方に動作した」とは、ドアが全開から全閉又は全閉から全開に動作した場合を意味する。

被告物件は、電源投入後、ドアが全開位置まで移動し、ストロークの原点を定める動作がなされるが、ドア板を制御する目的で初期学習として移動距離等の計測を行うのは、その後の全開位置から全閉位置までの移動であり、右移動の間に、ブラシレスモータ1の回転に基づいてドアの移動量を検出する検出部2によって、移動量が検出され、RAM32に記憶されるから、構成要件(三)を充足する。

また、右の場合、リセットボタンを押さずにドアを始動すると、右のRAM32に記憶された計測値とドアの開閉動作における移動距離を比較することによって、ブラシレスモータ1の制御を通じてドアのブレーキ装置が調整されるから、構成要件(四)を充足する。

(被告の主張)

右の場合、リセットボタンを押さないと、ドアの移動距離は、EEPROM5に予め格納された基準データによって制御され、「最初にドアが全開から全閉まで動作して移動した距離」を記憶したデータによってドアの移動位置が制御されることはない。したがって、構成要件(四)を充足しない。

(二) 初期計測値が基準データより二〇ミリメートル以上小さい場合又は二〇ミリメートル以上一〇〇ミリメートル未満の範囲で大きい場合で、リセットボタンを押した場合

(原告の主張)

本件特許請求の範囲の「電源が投入されたとき又は電源が投入された後ドア始動信号が発生したとき」との文言や、移動距離を変更する場合などいかなる時点においてもドアの移動距離等の計測が自動的にできることが本件発明の作用効果の一つとして予定されていることからすると、構成要件(三)の「ドア始動信号」とは、電源投入時以外にその後何らかのきっかけでドアの開閉動作が開始する場合を広く含むと解すべきである。

また、本件明細書の発明の詳細な説明に、「ドア始動信号(例えばマット信号)」と記載されていることからすると、右構成要件の「ドア始動信号」とは、マットの上に人が立つことによって発生する「マット信号」に限られるものではない。

したがって、右の場合のリセットボタン操作も、右構成要件の「電源が投入された後ドア始動信号が発生したとき」に当たる。

そうすると、被告物件は、右リセットボタンを押すことによりドア始動信号が発生し、ドアが全開から全閉に移動する間に、ブラシレスモータ1の回転に基づいてドアの移動量を検出する検出部2によって、移動量が検出され、RAM32及びEEPROM5に記憶されるから、構成要件(三)を充足する。

また、その後のドアの開閉においては、右の記憶した距離とドアの移動距離とを比較することによって、ブラシレスモータの駆動制御がなされ、ドアの開閉動作が行われるから、構成要件(四)を充足する。

(被告の主張)

ドアの移動距離が誤設定された場合のドアのオーバーランによる危険の防止という本件発明の効果は、ドアを動作させる最初のストロークで安全を確保しなければ、これを得ることができないこと、任意の時点でドアの移動距離を計測するのでは、本件特許の拒絶査定に挙げられたティーチングを行うのと同じであること、原告は、本件特許の拒絶査定に対し、本件発明は、自動ドアの電源を入れて最初にドアを動作させる時点において、自動ドアのメモリをリセットし、最初にドアが移動した距離を測定してその値を自動ドアの動作の基準とするものであると主張して本件特許の登録を得たこと、構成要件(三)の文言が、「ドア駆動信号」ではなく「ドア始動信号」であることからすると、右構成要件の「ドアの始動信号」とは、電源投入後最初に人がドアの所に来たときにドアを開かせる命令がモータに対して出される信号をいうと解すべきであり、また、右構成要件の「最初に」とは、「電源投入後最初に」との意味に解すべきである。

右の原告が主張するリセットボタンを押すことによって発生するドア始動信号は、右の意味における「ドアの始動信号」ではないから、構成要件(三)を充足しない。

また、右の場合は、ドアが「最初に」移動した距離をその後のドアの移動距離の基準とするものではないので、構成要件(四)を充足しない。

(三) 初期計測値が基準データより一〇〇ミリメートル以上大きい場合

(原告の主張)

この場合、初期計測値を計測した後、リセットボタンその他何らかの追加操作を要することなく、内部的にドア始動信号が発生するが、構成要件(三)の「ドア始動信号」とは、右(二)(原告の主張)のとおり、電源投入時以外にその後何らかのきっかけでドアの開閉動作が開始する場合を広く含むから、右の内部的に発生するドア始動信号も右「ドア始動信号」に当たる。

したがって、被告物件は、右の「ドア始動信号」の発生により、ドアが全開から全閉に移動する間に、ブラシレスモータ1の回転に基づいてドアの移動量を検出する検出部2によって、移動量が検出され、RAM32及びEEPROM5に記憶されるから、構成要件(三)を充足する。

また、その後のドアの開閉においては、右の記憶した距離とドアの移動距離とを比較することによって、ブラシレスモータの駆動制御がなされ、ドアの開閉動作が行われるから、構成要件(四)を充足する。

(被告の主張)

構成要件(三)の「ドア始動信号」とは、右(二)(被告の主張)のとおり解すべきところ、右の原告が主張する内部的に発生するドア始動信号は、右(二)(被告の主張)で述べたような意味での「ドア始動信号」ではないから、構成要件(三)を充足しない。

また、右の場合は、ドアが「最初に」移動した距離をその後のドアの移動距離の基準とするものではないので、構成要件(四)を充足しない。

(四) 初期計測値と基準データとの差が二〇ミリメートル未満の場合

(原告の主張)

(1) この場合、EEPROM5に予め格納された基準データを用いるが、これは、初期計測値が、基準データと同一又は判定マージンの範囲内である場合、初期計測値を改めてEEPROM5内の基準データと入れ替える必要がないことから、当該基準データをいわば代用し、検出されたストローク値を改めて記憶する行為に代えているからにすぎない。したがって、初期計測値を記憶させる場合と同じであるから、構成要件(三)を充足する。

また、その後のドアの開閉においては、右の初期計測値の代用である基準データとドアの移動距離とを比較することによって、ブラシレスモータの駆動制御がなされ、ドアの開閉動作が行われるから、構成要件(四)を充足する。

(2) 仮に、被告が被告物件を出荷する際、リセットボタン等によりドアを移動させ、その移動距離を測定することで基準データを設定しているとすると、右設定行為は、それ自体構成要件(三)を充足する。

(被告の主張)

(1) EEPROM5に予め格納された基準データを初期計測値に代用するという原告の右主張は、本件特許請求の範囲の文言に反するのみならず、従来技術と本件発明との本質的な相違を無視したものであり、また、出願経過における原告の主張にも反するものである。

(2) 本件発明は、何らの固定データを有することなく、電源を入れる都度、新たにドア移動距離を計測するものであり、電源を切っても保有される固有データの設定のために、一度だけティーチング動作としてドアの移動距離を測定して基準データとすることは、本件発明とは異なるから、出荷時に基準データを設定する行為は、構成要件(三)を充足しない。

(五) 右(一)ないし(四)の全ての場合に構成要件を充足しなければ、被告物件は、本件発明の技術的範囲に属しないか

(原告の主張)

右(一)ないし(四)の一つでも本件発明の構成要件を満たせば、被告物件は本件発明の技術的範囲に属する。

(被告の主張)

右主張を争う。

3  争点3について

(原告の主張)

被告は、平成七年二月ころから三年間、被告物件を一年間に少なくとも三〇〇〇台以上、一台につき約三五万円から四〇万円程度で販売している。

また、本件発明の実施に対し、通常受けるべき金銭の額(実施料)に相当する額は、被告物件の販売価格の五パーセントを下らない。

したがって、原告の被った損害額は、右売上合計額である三一億五〇〇〇万円(年間三〇〇〇台×三年×三五万円)に五パーセントを乗じた一億五七五〇万円を下らない。

(被告の認否)

損害の発生及び額については争う。

第四当裁判所の判断

一  争点1について

証拠(甲一一ないし一三、一五、一六、乙一一)と弁論の全趣旨によると、被告物件の動作は、別紙動作説明書記載のとおりであると認められる。

二  争点2について

1  証拠(甲二)によると、本件明細書の発明の詳細な説明に、従来技術として、予め設定した数値によって自動ドアのドアの移動距離等を制御するものが挙げられ、右技術の問題点として、新設、移動距離変更に伴う数値設定の煩雑さや誤設定による危険が指摘されていること、右明細書に、「本発明においては、移動距離又は回転角度について数値設定することなく、自動ドア制御装置の電源がオンされたとき、或いは上記電源がオンされてドア始動信号(例えばマット信号)が出たとき、ドアを開又は閉のいずれか一方に動作せしめ、その最初のドアの移動距離などを記憶させ、いわば自己記憶により常に移動距離などを制御するようにして、この問題を解決した。」(2列四ないし一二行)、「本発明においては、電源投入後における最初のドアの徐行移動距離などをメモリ・カウンタのような記憶手段に記憶させ、その後のドアの開閉動作における移動距離などをこの記憶された数値によって制御するようにしたから、自動ドアを新設する場合や移動距離などを変更する場合に、いちいち正確な数値設定をする煩雑さがなく、しかも、誤設定される心配がないから誤設定された場合のドアのオーバーランによる危険を防止できる。」(4列二三ないし三二行)との記載があること、以上の事実が認められる。

また、証拠(乙五)によると、原告は、本件特許出願の際、平成四年一〇月二七日付け審判請求理由補充書において、本件発明の特徴として、次の二点を主張したことが認められる。

(一) 記憶手段は、電源が投入され又は電源投入後ドア始動信号が発生することにより最初にドアが開方向又は閉方向に移動する時、電源投入又はドア始動信号によってリセットされ、検出手段からの検出信号により当該ドアの移動距離又は回転角度を計数して保持する点

(二) 制御手段は、上記電源投入又はドア始動信号に応じてモータを始動させる信号を発生し、最初にドアが開方向又は閉方向に低速移動(徐行)して所定の停止位置まで到達した時、ドアの移動が制御されることにより、上記モータの回転出力及び上記記憶手段への入力を停止させる信号を発生し、更に、その後のドアの開閉動作時に上記検出手段によって検出された移動距離又は回転角度が、上記記憶手段に保持されている最初の移動距離又は回転角度と一致した時、上記モータの回転出力を停止させる信号を発生する点

以上の事実によると、本件発明は、予め設定された数値によって自動ドアのドアの移動距離等を制御していた従来技術の問題点を解決するため、自動ドアの電源投入後、ドアが開から閉又は閉から開へ移動する距離等を記憶し、右記憶された測定値によって常にドアの移動距離等を制御するようにしたものであると認められる。したがって、本件発明においては、ドアの移動距離等は、右記憶された測定値のみによって制御されるというべきである。

そして、右記憶された測定値のみによってドアの移動距離等を制御する本件発明においては、電源投入後最初に移動距離を測定するのでなければ、ドアの移動距離等の制御ができないこと、本件明細書の発明の詳細な説明の「上記電源がオンされてドア始動信号(例えばマット信号)が出たとき、」との文言からすると、構成要件(三)の「電源が投入された後ドア始動信号が発生したとき」とは、電源投入後最初にドアを開から閉又は閉から開へ移動させるためのドア始動信号が発生したときと解するのが相当であり、また、右構成要件及び構成要件(四)の「最初に」とは、「電源投入後最初に」との意味と解するのが相当である。

2  被告物件においては、電源投入後ドアが最初に全開位置から全閉位置に移動する間にカウントされたパルス数がドアのストローク値としてRAM32に記憶される(別紙動作説明書1)。

そうすると、右ストローク値は、構成要件(三)及び(四)の「最初にドアが開又は閉のいずれか一方に動作して移動した距離」に当たると認められる。

3  右1で述べたとおり、本件発明は、自動ドアの電源投入後、ドアが最初に開から閉又は閉から開へ移動する距離等を記憶し、記憶された測定値によってドアの移動距離等を制御するというものであるから、構成要件(四)において制御されるのは、ドアの移動距離等(移動距離又は回転角度)であると認められる。

しかるところ、被告物件においては、以下のとおり、右2のストローク値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離を制御していないから、構成要件(四)を充足しない。

(一) 初期計測値が基準データより二〇ミリメートル以上小さい場合又は二〇ミリメートル以上一〇〇ミリメートル未満の範囲で大きい場合で、リセットボタンを押さない場合

この場合、EEPROM5に予め設置された基準データとドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離が制御される(別紙動作説明書2(イ)(ⅰ)、(ロ))から、右2のストローク値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離を制御していない。したがって、構成要件(四)を充足しない。

原告は、この場合、初期計測値がブレーキ位置を調整するモータの駆動の制御に用いられるから、構成要件(四)を満たすと主張するが、右認定のとおり、右構成要件の「制御」とは、ブレーキ位置の調整ではなく、ドアの移動距離等の制御であると認められるから、初期計測値がブレーキ位置を調整するモータの駆動の制御に用いられるとしても、構成要件(四)を充足することはない。

(二) 初期計測値が基準データより二〇ミリメートル以上小さい場合又は二〇ミリメートル以上一〇〇ミリメートル未満の範囲で大きい場合で、リセットボタンを押した場合

この場合、初期計測値を測定した後、リセットボタンを押すことで、ドアが再度全開位置から全閉位置へ移動し、その間に計測された数値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離の制御が行われる(別紙動作説明書2(イ)(ⅱ)、(ロ)、3)。

したがって、この場合、右2のストローク値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離の制御が行われるのではなく、その後に計測された数値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離の制御が行われるのであるから、構成要件(四)を充足しない。

(三) 初期計測値が基準データより一〇〇ミリメートル以上大きい場合

この場合、初期計測値を測定した後、自動的に、ドアが再度全開位置から全閉位置へ移動し、その間に計測された数値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離の制御が行われる(別紙動作説明書2(ハ)、3)。

したがって、この場合、右2のストローク値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離の制御が行われるのではなく、その後に計測された数値とドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離の制御が行われるのであるから、構成要件(四)を充足しない。

(四) 初期計測値と基準データとの差が二〇ミリメートル未満の場合

この場合、EEPROM5に予め設置された基準データとドアの移動距離とを比較することによって、ドアの移動距離が制御される(別紙動作説明書2(ニ))。

原告は、この場合、基準データは、初期計測値の代用として用いられているにすぎないと主張するが、右1で述べたとおり、本件発明は、予め設定されたデータを用いる従来技術を改良したものであって、自動ドアの電源投入後、ドアが最初に開から閉又は閉から開へ移動する距離等を記憶し、記憶された測定値のみによってドアの移動距離等を制御するというものであるから、予め設定された基準データをドアの移動距離の制御に用いている場合が構成要件(四)に含まれないことは明らかである。

また、原告は、被告が被告物件を出荷する際、リセットボタン等によりドアを移動させ、その移動距離を測定することで基準データを設定しているとすると、右設定行為自体が構成要件(三)を充足すると主張するが、被告が被告物件を出荷する際、右のような方法で基準データを設定していると認めるに足りる証拠はないし、また、仮に右のような方法で設定がされているとしても、右1で述べたところからすると、本件発明は、電源が投入されるごとに、ドアの移動距離等を記憶し、右記憶に従ってドアの移動距離等を制御するものであるから、右のような方法で予め基準値を設定することが、構成要件(三)を充足することはないし、それに従ってドアの移動距離を制御することが、構成要件(四)を充足することはない。

(五) また、右1で述べたとおり、本件発明は、自動ドアの電源投入後、ドアが最初に開から閉又は閉から開へ移動する距離等を記憶し、記憶された測定値のみによってドアの移動距離等を制御するというものであるから、右(一)ないし(四)の全ての場合について、右記憶された測定値によってドアの移動距離等を制御しなければならないと解される。したがって、仮に、右(一)ないし(四)の一部について、右記憶された測定値によってドアの移動距離等が制御されている場合があるとしても、全ての場合において右記憶された測定値によってドアの移動距離等が制御されていない以上、構成要件(四)を充足することはない。

三  よって、原告の本訴請求は、いずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 岡口基一 裁判官 男澤聡子)

<以下省略>

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